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神学校紹介(3) エディンバラ神学校

更新日:2022.08.25

原田浩司

エディンバラ神学校(Edinburgh Theological Seminary)

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 もともと「スコットランド自由教会大学(Free Church College)」の名称でしたが、2014年に現在の名称に改名しました。スコットランド自由教会(Free Church of Scotland)の牧師を養成する神学部のみの単科大学として運営されてきましたが、海外から、また国内の他教派からも広く学生たちを迎え入れる神学教育機関としの意味づけを強調して、現在の名称に変更されたものと理解しています。筆者が留学したのは2007年の9月からでしたので、当時の「フリー・チャーチ・カレッジ」の名称の方が親しみ深く、この神学校で学んだ日本人留学生には神戸改革派神学校の袴田康裕教授がいます。
 

 エディンバラ神学校はエディンバラ大学のニューカレッジの建物の東側に隣接します。もともとニューカレッジ自体がスコットランド教会(Church of Scotland)から離脱した「スコットランド自由教会(Free Church of Scotland)」の大学として「新たに(ニュー:New)」創設された大学だったという歴史的な経緯があり、今日のニューカレッジにはスコットランド教会とスコットランド自由教会の共有財産としての資料があり、隣接するエディンバラ神学校の学生も、ニューカレッジの図書館のライブラリーカードを所有し、自由に利用することができます。
 

 学校としての規模は決して大きくはなく、筆者が留学していた当時、学生数は30名ほどで、約半数がスコットランド自由教会の牧師候補神学生で、残りの半分が外国からの留学生たちで、日本、韓国、香港、シンガポールといったアジアや、アフリカ、アメリカ、スウェーデンからの留学生もいました。スコットランドの宗教改革と長老教会の伝統的な神学とその歴史と本質を学ぶことを目的として留学した筆者は、宗教改革以来の長老教会の伝統を重視した、「保守的な」現在のエディンバラ神学校の方がむしろ魅力的でした。
 

 英国への留学には客観的な英語力を証明する必要があり、英国での語学試験「IELTS(アイエルツ)」のレベルは最低でも「6.5」が求められます。留学に備えて、筆者は週に一度、当時住んでいた大阪の「ブリティッシュカウンシル」が開催するIELTS講座に通いました。ただし、IELTSの試験は年間に数回「日曜日」にしか実施されないため、地方の牧師がこれを受験するために入念なスケジュール調整が必要になります。
 

 筆者が留学した当時、学長だったのが教義学(組織神学)のドナルド・マクラウド教授、また、わたしの論文指導を担当していただいたのが歴史神学のジョン・マッキントッシュ教授でした。エディンバラ神学校では、牧師としての牧会経験を経た教授陣によってスタッフが占められていました。単純にアカデミックな業績(論文数等)が優先される世俗の大学ではなく、神学と牧会が一つにつながるための教育が実践されている点も、この神学校の教育が有益であると思える点です。
 

 エディンバラ神学校では50分授業が伝統で、9時に講義が始まり、午前中が4コマの講義時間です。教室は、教義学や教会史、旧約聖書といった専門分野ごとに教室があり、教室の背面や側面に、その領域の図書が配置され、分野ごとの図書室としても利用され、教授も講義中に棚から図書を取り出し、「この書の第三章に詳しく書かれているから、ここを読んでおくように」など、講義内でも活用されていました。
 

 午前の4つの講義を終えると、午後1時に、全学生が食堂に集って昼食をとります。食事をしながら学生同士の交流が行われますが、スコットランドの訛りで会話内容が分からず、テーブルの皆が笑っているのにポカーンとしていることも多々ありました。午後1時40分頃に全員がホールに移動し、締め括りに「大学礼拝」を行います。説教は、教授陣やスコットランド自由教会の牧師候補を中心に、学生たちも担います。筆者や韓国の留学生など東アジアからの留学生がこの役目を担うことはありませんでした。
礼拝後の午後2時からは、学生各自の自習の時間となります。筆者は16世紀に関する歴史的資料の文献の読解と執筆に時間を費やしました。教室で講義を聴講するのはスコットランド教会史のみで、それ以外の時間は午前も図書館で過ごしていました。エディンバラ神学校では図書館の定位置に自分の居場所を確保し、居住地から毎日、この定位置に通っていました。ただし、大学は午後5時で閉館となり、全学生は強制的に帰宅させられるため、夜の時間帯は自宅での自習でした。大学で過ごす時間帯はおもに自分自身の論文作成の研究にあて、自宅では専ら翻訳に勤しみました。
 

 最後に、エディンバラ神学校で学ぶ最大の利点について強調します。エディンバラ神学校はグラスゴー大学との連携協定を結び、グラスゴー大学が審査して学位認定を実施し、エディンバラ神学校の学生をグラスゴー大学の「学部・大学院」の学生として認定したうえで、学位を授与します。もちろん、学位認定のために、最終段階で、グラスゴー大学と同じプロセスで、論文審査と共に対面での口頭試問(英国では「バイバ:Viva」と呼ばれる)を経ます。筆者のバイバの際は、当時の留学先のマクラウド学長の他、当時のスコットランド宗教改革の研究の第一人者であるグラスゴー大学のイアン・ヘイツレット教授、アイルランドの長老教会の神学大学の学長の3名からの質問に口頭で答える(もちろん英語で)という、ものすごいプレッシャーのかかる口頭試問でした。
 

 現在の名称を変更した「エディンバラ神学校」が、筆者がかつて学んだ「スコットランド自由教会大学」の時から時間も経過し、教授陣がすっかり入れ替わりましたが、グラスゴー大学との関係性も含め、神学教育のスタンスは変わっていません。特に、宗教改革や長老制度、またウェストミンスター信仰規準という17世紀からのスコットランドの長老教会の伝統とその論点など、スコットランドの神学と教会史について深く、広く学べる、とても有益な神学校です。

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